Crossroads 〜守護神ゴーレスとちゅら幸子さんとの交差点〜
みかつきなお
葦原みずきと八幡小夜子、今日はゴールデンウィーク明けの初登校日の下校だった。
那覇商業高校からの帰り、みずきが下宿している小夜子の家に2人は着いた。
「そういえば、私夏服はじめてだった。面倒なネクタイがないセーラー服でいいね。でも今日は涼しい一日中だった。」と、みずきは、つぶやいた。小夜子は、「くもって風が強い日はやはり沖縄は涼しいから」
「ただいま!」と二人が玄関を開けると小夜子の祖父、幸賢が仏壇に線香を焚いて拝んでいた。
二人はすぐにカバンを置いて仏壇に手を合わせた。
しばしの沈黙のあと小夜子が「オジー、なんで今ウートートーしてたの?』と聞くと、二人をにらんで一言。
「オジーの恋敵が戦死した日だわけよ。」
幸賢のにらみつけた顔と恋敵、戦死という言葉のギャップに、みずきと小夜子の反応は正反対だった。くちびるで笑いを堪える小夜子。目に思わず涙を蓄える、みずきは小夜子に言った「そこ、笑うとこじゃない。」この一言に小夜子は笑ってしまった。「オジーの真剣な顔が可笑しくて…。」幸賢は畳を叩いた。「えーひゃー、真剣に聞け!」
みずきは、「そうよ、失礼よ。戦争の話なんだから。幸賢さん、戦前戦中の話は詳しく聞きたいです。恥ずかしくても教えてください。戦死された方のお話をしてください」
幸賢は口を噛み締めたまま首を縦に振った。
「よしわかった、まず仏壇の小さい写真立てを見ろ。15歳の私と池宮城カメさんだ」
白黒写真には直立の学ランの制服姿の幸賢と椅子に座った三つ編みでセーラー服のスカート姿の少女がいた。小夜子がすぐ写真立てを覗き込んだ。
「あい、オジーでーじイケメン。この子がカメさん?可愛い!」
みずきは疑問を投げかけた。
「で幸賢さん、恋敵さんのお話しから聞きたいんです」
「わかった。あの人は西銘真一さんと言って六つ上のお兄さんで優しい人で、私とカメさんは同い歳で地域の子供たちの兄貴分だった。12歳くらいになるとカメさんとは付き合ってるふーじーになってきたわけさ。
ところが15の時東京から来た軍人に突然スカウトされた」
小夜子が言った。「あ、陸軍中野学校!」
「そう、能力者探しのプロに捕まった。私はこの歳で陸軍エリートにいきなり昇格した。そして東京行きが決まり、私はカメさんを強引に誘って、
写真館で撮影したのがこの写真」
みずきは「カメさん恥ずかしそうな表情。嬉しいんでしょうね」
幸賢は続けた。
「そして私は盛大な見送りによって私は東京へ旅立ち、葦原さんや上運天さんに出会った。カメさんとは文通していたが、しばらく返事が来なかった。そして突然、『西銘さんと結婚することにしました、ごめんなさい。西銘さんに赤紙が来て、南方に送られることになって、その前に告白されて婚約することになりました。本当にごめんなさい』という文面の手紙が来て、人生最大のショックだったわけよ」
小夜子は、「うん遠くの幼なじみより大人のお兄さんがいいのわかる。けど、なんかサイテー。多分オジーは告ってなかったでしょ。はじかさー(恥ずかしがって)してからに。大体わかるんだから」
みずきは、「時代が時代よ。戦場に出る前にどうしても好きな人に婚約を求めるのは仕方ないんじゃない。」
幸賢は話を続けた。「そう、あの時代はそうだった。しかし西銘さんはフィリピンで戦死した。戦況が厳しくなっていたからそれは戦後知った。私達が沖縄に派遣され、暫くして米軍の上陸。激しい戦いの始まり。そして戦後、カメさんを探した。カメさんは西武門(にしんじょう)前の池宮城天ぷら店だったからそれを頼りに探したが、家族も離散していたから生き残った親も、はぐれたまま行方不明のままと言っていた。戦死したと諦めがつくまで時間がかかった。だから西銘さんとカメさんを同時に拝んでいるわけさ。オジーの話はこれでおしまい。」
小夜子が思い出したように語り出した。
「池宮城天ぷら店、近くにあった!ちょうど1年前の5月6日向こう側の通りに見つけて、おばあさんから天ぷら買った!でも数カ月後行ったら更地になっていた。近所に聞き込みに行けば池宮城天ぷら店の正体とあのおばあさんがカメさんだったかわかるはず。みずき行こう!」
「うん、オジー待っててね。あ、この写真写メ撮っていい?」
「ああ、いいよ。お前たち、待ってるさ」
幸賢はもう一回線香を立てて祈った。カメさんがもしかしたら生きていますようにと。
二人は交差点に向った。小夜子は、「この交差点の向こう。本当に歩いてすぐなんだから。」
しかし交差点の異様さに気がついた。国際通りに近いのに車も人もいなくて、スクランブル交差点でもないのに歩行者信号が四隅全て青信号だった。静けさが漂っていた。
「なんだか変だけど小夜子、行きましょう」
交差点の向こうの通りは電線の多さに気がついた。
アクチュエーターマシンの多い国際通り周辺は電柱の地中化がだいぶ進んでいるはず。古い感じの町並みを見ながら小夜子は発見した。
「池宮城天ぷら店発見!」
Crossroads 2 に続く。


