那覇の秋を彩る風物詩、那覇大綱挽
文:みかつきなお
琉球王国時代から続く伝統行事
沖縄の秋を彩る風物詩、那覇大綱挽。今年もその熱気を肌で感じようと、現地へ足を運びました。
那覇大綱挽の歴史は、琉球王国時代の15世紀半ばまでさかのぼります。
もともとは、交易都市として栄えた那覇四町(西・東・若狭・久米)の地域行事として始まりました。その後、王国の祝賀行事や、中国皇帝から派遣された使節である冊封使を歓待する国家的な行事としても行われるようになりました。
明治以降も節目ごとに開催されていましたが、1935年の開催を最後に、戦争の影響などで一時途絶えてしまいます。
そして1971年、那覇市制50周年記念事業として、36年ぶりに復活を果たしました。
現在では、沖縄の秋に欠かせない一大イベントとして、多くの人々に親しまれています。

ギネス級の大綱と、街を包む熱気
会場に到着して、まず目を奪われたのは、目の前に広がる巨大な大綱です。
那覇大綱挽で使用される綱は、米藁で作られたものとして世界屈指の規模を誇ります。1995年には「世界一のわら綱」としてギネスブックに認定され、1997年には記録を更新しました。
その規模は、まさに圧巻です。
- 全長:約200メートル(男綱・女綱を合わせた長さ)
- 総重量:約40トン
- 直径:約1.56メートル
- 手綱:約280本
この巨大な綱は、東(アガリ)の「男綱」と西(イリ)の「女綱」に分かれています。挽き合いの前には、両方の先端にある輪を合わせ、巨大な丸太「カヌチ棒」を通して結合させます。
東西の綱を結び合わせるこの儀式には、陰陽の合一や豊穣への願いが込められているとされています。
また、綱挽きが終わると、手綱を持ち帰ることもできます。無病息災や家内安全、商売繁盛を願う縁起物として、親しまれているそうです。
会場には、那覇市内各地の自治会から集まった旗頭が立ち並びます。
色鮮やかな旗頭が青空に映え、祭りの始まりを告げるように爆竹の音が鳴り響きます。
大勢の人々が集まり、街全体がひとつの大きな舞台になったかのようです。
伝統を受け継いできた地域の人々の誇りと、祭りを楽しみにしていた観客の期待が、会場いっぱいに広がっていました。

突然の大雨! 祭りの行方は……
ところが、祭りの最中に突然の大雨が降り始めました。
観客は一斉に雨宿りへと動き、私もいつしか人波の中に埋もれてしまいました。
現地まで足を運んだというのに、大綱挽き最大の見どころである勝負の行方が、よく分からなくなってしまったのです。
何とも皮肉な話です。

それでも、後から耳にした話には驚かされました。
雨を吸って重くなった東西の大綱をつなぐため、なんとクレーン車まで出動したというのです。
人々が力を合わせて引き合う大綱挽きも、自然の力にはかなわないのでしょうか。
いや、そんな雨さえも祭りの一部にしてしまうところに、那覇の人々のたくましさがあるのかもしれません。
また、勝負の神様として知られる安里八幡宮には、青年会から奉納があったそうです。
雨に見舞われながらも、祭りを支える人々の思いは変わらなかったのでしょう。

東か、西か。勝敗に込められた願い
さて、気になる今年の勝負は、引き分けとなりました。
那覇大綱挽では、綱の中央に設置された印が東西いずれかに5メートル動くと勝敗が決まります。制限時間内に規定の距離に達しなかった場合は、状況に応じて判定、あるいは引き分けとなります。
1971年の復活以降、東西は互角に近い戦いを繰り広げてきました。
これまでの通算成績は、東が18勝、西が15勝、引き分けが17回とされています。
そもそも、東と西が勝つことには、それぞれ意味があると伝えられています。
沖縄各地の綱引きには、東が勝てば豊作、西が勝てば豊漁という伝承を持つ地域もあります。
一方、那覇大綱挽では、東の勝利は国家安泰や五穀豊穣、西の勝利は商売繁盛や交易の繁栄につながるとされています。
東は首里城を中心とする王府側、西は那覇港を中心とする交易都市側を象徴しているともいわれます。
つまり、どちらが勝っても、それぞれにめでたい意味があるのです。
勝敗を競いながらも、祭りに参加する人々や見物客の願いは、きっと同じなのでしょう。
今年は東西どちらかに軍配が上がることなく、互いの健闘をたたえ合う結末となりました。
そして、勝負の後には空手の演舞も披露されました。
綱を引くだけでは終わらないのが、那覇大綱挽の魅力です。
地域の伝統と芸能が一体となり、祭りをさらに盛り上げていきます。

勝ち負けを超えて、人と人を結ぶ祭り
雨に打たれ、群衆にもまれ、肝心の勝負の瞬間さえ見届けられなかった今回の取材。
それでも、巨大な大綱を前にした人々の熱気と、雨にもひるまない祭りの力強さは、しっかりと心に残りました。
那覇大綱挽は、単に東西の勝ち負けを決める行事ではありません。
地域の人々が力を合わせ、伝統を受け継ぎ、平和や豊穣を願う行事でもあります。
大綱を引く人も、旗頭を支える人も、沿道から声援を送る人も、それぞれの立場で祭りに参加しています。
大勢の人々が同じ場所に集い、ひとつの綱を引く。その光景には、人と人、地域と地域を結びつける大きな力があるように感じます。
力と力が拮抗し、引き分けになる年があるのも、この祭りならではの特徴です。
勝敗以上に大切なのは、万人(うまんちゅ)が心をひとつにして、平和を願うことなのかもしれません。
今年は雨に振り回されてしまいましたが、だからこそ、祭りを支える人々の熱意や、地域に根付いた伝統の強さを感じることができました。
那覇の秋を彩る大綱挽。
来年こそは、東西の勝負の行方を最後まで見届けたいと思います。

観光客向け:アクセス&見どころガイド
祭りは主に「パレード」と「綱挽本番」に分かれており、会場が異なります。中心街での開催となるため、移動には沖縄都市モノレール「ゆいレール」の利用がスムーズです。
うふんなー(国道58号 久茂地交差点付近):大綱挽本番の会場。最寄り駅は「県庁前駅」または「旭橋駅」。
国際通り:市民パレードや旗頭行列の舞台。最寄り駅は「牧志駅」「美栄橋駅」「県庁前駅」。
大綱引き会場と旗頭パレード会場の簡易マップ。
取材後記 ぜんざいなおみ
今回、みかつきさんに教えてもらった有料駐車場を利用しました。
会場からとても近く、まさにベストポジション! あまりの便利さに、うれしくなりました。
当初は、少し歩く県立図書館か、ジュンク堂向かいのみどり駐車場を利用しようと考えていたので、ありがたかったです。

ところが、会場近くのコンビニで雨宿りをしていると、みかつきさんがビールを飲みたそうな様子。
そこで、ビールとノンアルコール飲料を買いに行くことにしました。
しかし、なんとノンアルコール飲料は売り切れ!
これはショックでした。
ダイエット中の私は、代わりにウィルキンソンのタンサンレモン味をチョイスしました。
ところで、タンサンレモンのパッケージに使われている書体が、なかなかかわいいのです。
祭りの取材に来たはずなのに、最後は飲み物のパッケージにまで目が向いてしまいました。
そんな寄り道も含めて、現地に足を運ぶ楽しさなのかもしれません。

取材・撮影:みかつきなお/ぜんざいなおみ