
Crossroads 2 〜守護神ゴーレスとちゅら幸子さんの十字路〜
「ふああ、眠い」
梅雨前の穏やかな気候。埼玉生まれのカナには心地よい気候。
カナは4月から父の実家、池宮城天ぷら店に下宿している。カナは時々店の手伝いをして、4月はシーミー(清明祭)用の重箱用の天ぷら作りに奔走して、ゴールデンウィークが終わるとシーミーが終わり、平常営業にもどった天ぷら店でのカナの仕事は祖母が休んでいる時の代わりに店番をすることになった。と言ってもお昼にお客さんが来て以来、しばらく新機種のスマートフォンをいじっているだけだった。昔はたばこも売ってた道沿いのカウンターでだらけていた。
坂の上から日傘を差した着物の女性が降りて来たのをカナは見た。何か昭和初期の人のような髪のセットの仕方。そして近づいて来ると共に30代〜40位の女性、いや若くも見える。それにしても美人だ。
…と思ってたらこちらで立ち止まった。
「い、いらっしゃいませ」
着物の女性はカナの顔を覗きこみ、「男の子かなと思った。私ったら失礼、いつものお婆さんは?」
「今日はゴールデンウィーク明けでお休みです」
「そう。じゃあ、どの天ぷらにしようかしら?」
女性はショーケースを覗き込んだ。
カナはその仕草ひとつひとつが優雅で昔の映画から出てきた若奥様のようだと思った。
その頃、T字路の先の左角に池宮城天ぷら店を見つけた小夜子は右の坂から降りて来る着物の女性も発見した。
「お客さん立ち止まった。営業してる」
みずきは考えていた事を言った。「結婚して苗字変わってたらお店の名前変わってたりして」
「余計な事考えないで、今は突撃よ。しかし1年前みた赤瓦屋根の2階建。
築50年以上は経ってる雰囲気。二度目来た時の更地は場所違い、よしみずき行こう!」
二人は小走りでT字路へ向かって行った。
「やはりこの建物!」一応お客さんと応対している様子なので、二人は着物の女性の横に付いてみた。
着物の女性は「あら高校生、元気そうね。この二人の分、魚天ぷら4本追加」
カナもみずきも小夜子もこの女性から放たれるオーラというか色香に包まれていた。
ほわほわ気分のカナは「はい、この二人はおまけしてあげます」
「よかったわね。」その笑顔にまたドキドキした二人。
カナは着物の女性用と女子高生用で袋を分けて渡した。
みずきは思いきって言った。「お姉さん、一緒に写真撮っていいですか」
着物の女性は「いいわよ」カナは「私が撮ってあげる。携帯かして」
カナはみずきからスマホを受け取った。そしてびっくりした。
「高校生がみた事ないスマホ!金持ち!。じゃあ行くわよ。ハイポーズ」
着物の女性を挟んでみずきと小夜子はニッコリ笑った。みずきは「失礼ですけどお名前は?」「許田幸子よ。また会えるといいね」笑顔で返した後、カナに言った。「カメさんによろしくね。」「はい。ばあちゃんに幸子さんが来たって言っておきます。」そうして幸子さんは坂を登って言った。
小夜子がカナに詰めよった。
「お姉さん!おばあさんは池宮城カメさんですか!!」
「そうだけど…」「すぐ呼んでください!私八幡小夜子、八幡幸賢の孫です」
みずきは「焦らない、焦らない。」
カナは「そう、奥の仏間にいるから。年寄りに焦らせないで、とりあえず呼ぶね。ばあちゃーんお客さんよ!」
小さい声で奥の部屋から声がした。「待ってよー」
カナはみずき達に話しかけた。
「ねえ、どこの高校?お姉さん半分ナイチャーだから。4月に沖縄に来たばかり。友達がいなくてね」
二人は「那覇商業高校。多分一番近い高校」
みずきは「お姉さん名前は?友達になろうよ」「私、池宮城カナ、大学卒業したばかりの22歳。」「私は葦原みずきです。私は鹿児島生まれの生粋のナイチャーです。私は去年11月に沖縄に来ました。この子はさっきも言った小夜子ちゃん。家は近くで、私は彼女の家に居候しているの。」
「そっか、似たもの同士ね。じゃあ、地元の小夜子ちゃん、今度遊びに連れてって」
「うんいいよ。北谷あたりなら面白いはず」
奥からおばあさんが出て来た。前に出る小夜子を押さえて、みずきは構えるようにスマホ画面を見せた。「この写真に見覚えはありませんか!あなたが池宮城カメさんですか?」

おばあさんはうなづき「はい私がこの写真のカメですよ。あいえーな、でーじなとん!わんねーくぬ写真立ててぃ、幸賢さんと西銘さんのウガンしてた所やさ。んでぃ、あんた達は?」「私は八幡小夜子、孫です。会いたかったです」そこでカメは仏間に向かって叫んだ。
「幸賢さんよー、わんにふられたから、ナイチャーのいなぐ(女)と子供作って戦死したねー!はっさみよ、わんの人生は西銘さんと幸賢さんをウガンする人生だったのに!ちゃーすがやー…。」
倒れ込むカメさんの肩をみずきが叩き、小夜子は言った。
「オジーはいちちょーる!(生きている)そして、戦死してない。うちのオバー清子はうちなーんちゅで、昭和34年に結婚している。さっきの写真はオジーがいま先ウガンに使ってた写真よー。電話してみる?オジー出るよ。」
そう言って携帯をかけた。
「えーオジー。カメさん見つけたよ。電話かわるねー?」
幸賢は嬉しさと感動が混じり合った気持ちになった。そして一言。
「えーひゃー代われ。」
カメは恐る恐るスマホを手にした。
「えーカメーちゃーがんじゅーか?(元気にしてるか)」
「やさやー、あんたなんでいちちょーる?沖縄戦で死んだんじゃないの?糸満の平和のイシジんかい、あんたの名前あるさー」
「わんは死にがたーなりそうだったけれどみての通り生きてるさー。電話じゃだめだね。うんじゅ(あなた)の店んかい今から行くさー。まっちょーいびん(待っててよ)」
小夜子は言った。「自転車で行くんでしょオジー。パラダイス通りと沖映通りの十字路をまっすぐ突き抜けて、T字路の左側だよ。転ぶなよー。」
「カメさん待ってなさい。幸賢はあんたが好きだった。着いたらもう一回あの時言えなかったことを伝えるさー!」
そう言って黒電話を置いて、この後西銘さんの墓参りに行くための道具も載せたまま、アクチュエーター技術を応用した手製の蒸気アシスト自転車で走り出した。煙をもくもく立たせながら。
Crossroads 2 終わり。 次回最終回。
