量産工房さんから11月特集関連のネタが届きました!
今回は特集1番ノリで掲載です。
剛よく柔を制す?
T高校2年の時の体育の授業のお話。
自分で言うのもなんだが、スポーツは得意じゃない。
特に球技は苦手なのだが、その年の秋の種目は柔道だった。未体験の種目だったこともあり、特に苦手意識を感じることもなく授業を受けていた。
柔道着の着方から始まって受け身の練習を一通りして、先生が柔道の基礎的な技をレクチャー、実演して見せ、やがて二人一組になって練習することになった。
柔道未経験の二人が組んで技を掛け合うのだから当然なかなか技が決まるわけもない。私の組もそうなるはずだった……のだが、そこで私はとんでもない技を決めてしまった。
体格もほぼ同じ相手だったので、何気なく内股から出足払いをかけて相手のバランスを崩し、相手が後ろに後退したところを狙って背中合わせに潜り込んで一本背負いの真似事をしたらドスンときれいに決まってしまったのである。
武道場に響きわたる音に、皆が一瞬手を止めて見つめるほどで、私は変な注目を集めることとなった。
ガリ勉ではないが、学年席次が上位だったこともあり、その意外性も強かったのだと思う。それでも相手を変えても、またドスンと一本背負いを決めてしまって、私はクラスのエースに祭り上げられてしまった。
そして、次に先生が私の相手に指名したのは、隣のクラスのK君。K君はとても人当たりのいい性格で、好感が持てる相手だったのだが、体重が百キロ近くある巨漢。組手でも小兵の柔道部員のクラスメートまで投げていたらしい。
お手本というわけでもないだろうが、他のクラスメート全員が見守る中での対決となり、K君は笑って「剛よく柔を制す」と宣言していた。
ここで言う「剛」はK君の方で、異論はない。ただし、私の方は「柔」などと名乗れるほどの達人では決してない。絶対に。偶然なのだよ。技が決まったのは。そもそも1時間程度の練習で、柔道の達人が生まれるはずがないじゃないか。柔の道を否定してるよね? これ。
無理じゃないの? 勘弁して! と言うこともできず、体重差無視、オリンピックで言う無差別級デスマッチの開催となってしまった。
まったく、今振り返っても冷や汗もん。何考えてるのか? 先生は鬼ですよ。
そして体重差30キロ近い相手との激突。
互いに道着をがっしとつかんだもののパワーでK君に押され、こちらから技をかけられる状況にはとてもならない。力業で巻投げをかけられそうになるが、素人なので強引すぎ、とっさに相手の腰に絡みついて巻投げを阻止する。受け身の練習もほんのちょっとしただけなので、まともに投げられたら負傷必至。
それが2度3度と続いて、私の柔道着は脱げかかり、顔面は柔道着でこすれて視界も見えなくなり、私は投げられないようにするのが精いっぱい。
「見えない、見えない」と必死でアピールして、ようやく「まて」でストップ。けれど試合は終わらない。柔道着を直し、帯を締めなおして再び続行の悪夢が続く。
ど素人がここまでがんばったんだから、もういいんじゃね?
とかなんとか考えてたら、またまた巻投げをかけられそうになって、相手の腰に必死にしがみつく。今度は無意識のうちに相手の足に自分の足を絡めたので、二人同時にドスンと倒れこんだ。
終わり? 終わった? と思う中、判定はない。つまり試合は終わらない。
もうやけくそ気味に、先生のレクチャーにあった寝技・縦四方固めをかけようとするもうまくいかず、さらに横四方固めに移ってみたものの、素人の技では相手のパワーで振り払われて抑え込むのは到底無理。
どーすればいいの? これ。もはや絶望的になったところで、勝負は時間切れで引き分けとなった。
私としては、なんとか授業でのピンチを切り抜けたつもりだったが、この善戦? のおかげで、クラス対抗柔道戦での大将に選ばれてしまい……悪夢は放課後へと続くのであった。
最後に、クラス対抗柔道戦の結果を書くつもりはないが、私が柔道に目覚めることはなかったことだけは明記しておく。
量産工房/記
とんだ災難ですが、面白いですね。
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