今回も投稿作品になりますでしょうか。
ペンネームnaoさんから映画のコラムが届きました。
今回はタイトルがあります。
内容は以下の通りです。
アメリカンニューシネマについて
60年代初頭から半ばにかけてアメリカ映画は停滞していた、リアルさとは程遠いどこかしら現実と乖離した映画が製作され一部には不満を持つものがいた。そうした不満が爆発し表現の意識革命となったのが60年代後半に始まるアメリカニューシネマである。アメリカンニューシネマは1967年のアーサー・ペン監督作による『俺たちに明日はない』がニューシネマの始まりとされる。ニューシネマの特徴は現実のアメリカ社会で起きた公民権運動、ベトナム反戦運動、ドラッグ、政治腐敗、そして学生運動などを比喩的または直接的に取り上げリアルな作劇スタイルで新時代を切り取る手法で若い世代の閉塞感を描くことに主眼を置く。ニューシネマが実質的に終焉したのは1976年のスコセッシ監督の『タクシードライバー』とジョン・G・アビルドセン監督の『ロッキー』だとされる。約10年間にわたりアメリカ映画をリードしてきた新しい波であるニューシネマはアメリカ建国200年を目前に潰えたのである、それはまたニューシネマというジャンルらしい宿命とは言えないだろうか? ウェストコーストのバンド、イーグルスの名作『ホテルカリフォルニア』もある種のニューシネマ性を内包している、何故ならばアメリカ建国200年に合わせて彼らなりのステートメントであり辛辣な表現の歌詞で社会を冷徹に直視、最後に収録された『ラストリゾート』という曲ではネイティブアメリカンの虐殺にふれ、カリフォルニアが如何に呪われた土地であるかを歌う。そして映画に話を戻すと旧態依然としたアメリカ映画を批判的に乗り越える目的意識で形成されたニューシネマのムーブメントが去ると70年代後半以降に反動化の波が始まる、これはまた別の機会に。ニューシネマの形成した流れには大きく分けて3つの前段階があった、まずはロジャー・コーマンという存在。彼は独立系映画会社を立ち上げハリウッド映画とは異なるスタイルと方法でB級映画を製作配給し独自の地位を確立、反ハリウッド派の急先鋒で後に名監督になるコッポラ、スコセッシ、ジョナサン・デミらはコーマンの元で映画製作を学ぶ。ジョン・カサヴェテスは俳優としても活躍し1959年に監督と主演を兼ねた『アメリカの影』を発表、リアリズムに徹した作劇スタイルは後のニューシネマや80年代にデビューするジム・ジャームッシュへ多大な影響を与えることになる。1959年は奇しくもヌーヴェルヴァーグの重要作が相次いで発表された年でもある。ゴダール『勝手にしあがれ』トリュフォー『大人は判ってくれない』ヌーヴェルヴァーグもニューシネマに影響を与えた。既存の映画的枠組みから逸脱する表現スタイルが次々と登場してきたのが50年代後半、規定化されたハリウッド映画に対する異議申し立てがニューシネマの源流である。現実の挫折を描くことに主眼を置いたニューシネマの最大の魅力は映画を通して社会の本質を直視し己で考え出すことを促した点。ニューシネマの名作群は無残に夢や理想が打ち砕かれる有様が描かれる、しかしその無残さは常に現実社会でも起きる/起きている、社会への想像力を養うためにも今現在2020年に於いてニューシネマを観賞して頂きたいと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・